


- 【ブランド力とは】付加価値を提供できる企業だけがお客様から選ばれる
- 【ブランド力とは】ブランディングとは良いイメージを持ってもらうための活動である
- 【ブランド力とは】企業フィロソフィーとは自分たちの存在意義を語るもの
- 【ブランド力とは】「なんとなく経営」はもうやめよう
- 【ブランド力とは】去年と同じ商品やサービスは通用しない
- 【ブランド力とは】危機感を持ちチャレンジする企業だけが生き残る
- 【ブランド力とは】チャレンジする企業に面白い人間が集まる
- 【ブランド力とは】ブランド構築とは、その企業でなければできない仕事を追求していくこと
- 【ブランド力とは】企業におけるすべての活動は、ブランドづくりにつながる
- 【ブランド力とは】企業のイメージを想起させるのは社員、ごまかせないのが人
- 【ブランド力とは】企業カルチャーが定着していれば社員はどう動くか分かる
- 【ブランド力とは】価値観が共有できていれば、お互いに不幸は生まれない
【ブランド力とは】付加価値を提供できる企業だけがお客様から選ばれる
お客様は何を基準に選択しているのか
今の時代、商品やサービスは、一定のクオリティーに達していなければお客様から支持されません。良い商品、良いサービスを提供できるよう企業が努力することは当然なのですが、それだけでは足りないのです。
なぜなら、自分たちだけが努力しているわけではないからです。同じマーケットで競合しているライバル企業も、同じようにレベルアップを目指して頑張っているのです。
ITが発展したことで、生活は便利になり多くのメリットが生まれました。企業もアイデアを商品化、サービス化するまでのスピードが、とても速くなりました。
しかし、これはオリジナルなアイデアで先行しても、すぐにライバル社に追いつかれることも意味しています。
同時に市場調査の技術も進歩していますから「自分だけの」商品やサービスが持ちにくくなりました。
同じような価格で同じようなクオリティーの商品が並んでいるのです。商品やサービスそれ自体では、差別化しにくい時代になったといえます。
求められるのは満足感というブランド力
では、お客様は何を基準に商品やサービスを選んでいるのでしょうか。
お客様は「なんとなく」「適当に」お店や商品を選んでいるわけではありません。
衝動買いもありますが、それらには確固たる基準があります。
何が最も自分を満足させてくれるのか、そこにフォーカスしてお店や商品を選んでいるのです。
満足感とは、お店や商品にまつわる全ての要素が対象となります。
デザインや肌触り、使い心地や味といった商品そのものに関する要素だけでなく、お店の雰囲気や商品につけられたロゴマーク、商品を入れる紙袋、店員さんの的確な商品知識、接客態度、商品にまつわるストーリー、信頼感や安心感、これらの直接目に見えないものまでをひっくるめた満足感を求めているのです。
この、お客様が得られる満足感こそがブランド力なのです。
商品やサービスにブランドという付加価値を提供できる企業だけがライバルと差別化でき、お客様から選ばれるのです。
企業の経営戦略とブランド戦略は、一体です。
今後、「なんとなく」これまでと同じ商品やサービスを提供している企業は、衰退していくでしょう。
自分たちはどの市場でどう戦って生き残っていくのか、お客様にどんな価値を認めてもらうように働きかけるべきなのかを突き詰めて考えるブランド戦略が、求められるのです。
【ブランド力とは】ブランディングとは良いイメージを持ってもらうための活動である
ブランドとはお客様が評価する価値
ブランド力はとても大事ですが、そのブランドをどう構築すればいいのでしょうか。
ブランディングとマーケティングを混同して理解している企業が多いので、ここでしっかりと定義しておきましょう。
マーケティング=自分から自分のイメージを相手に伝える努力
ブランディング=相手に自分のイメージを持ってもらう努力
一見にているようですが、外部からの評価がその企業のブランドを構築するのです。
企業が「うちはこれがすごいんです」「価値があります」とアピールするのはマーケティングです。
企業が消費者にアピールするのは当たり前のことですから、これかけでは消費者はピンときません。
外部からの評価を得るために、相手に自分たちが大切にしている想いや考え方を理解してもらい、良いイメージを持ってもらうための活動がブランディングなのです。
ブランド力があるとお客様のほうで良いイメージを膨らませてくれる
お客様が、「この企業はすごいんじゃないか」と思ってくれる仕組みをつくることがブランディングです。
例えば、ルイヴィトン。下地にビニールクロスを貼り合わせたルイヴィトンのトランクは、世界で最もコピー商品が多いともいわれており、数々の逸話に彩られています。
ナチスが金塊を運ぶときに破けなかったとか、タイタニック号が引き上げられたときにトランクの中が濡れていなかったとか。
真偽のほどは問題ではありません。お客様がブランドに対して「勝手に良いイメージを持つ」という点が大事なのです。
例えば、リッツカールトン。この世界的なホテルチェーンは、部屋の匂いにもこだわっています。
優先順位が決して高くない匂いにすらこだわるということは、ベッドや食事や清掃に関してはそれ以上に気を配っているのではないかと、お客様にイメージしてもらうために、匂いにフォーカスしてブランディングしているのです。
お客様に良いホテルだとイメージしてもらうために、設備からサービス、社員教育まで一貫してベクトルを合わせていくのが戦略なのです。
【ブランド力とは】企業フィロソフィーとは自分たちの存在意義を語るもの
企業理念は未来視点で構成する
企業理念をつくる際には、企業が一番大事にする想いを未来視点で構成する必要があります。現状視点でつくってしまうと、今以上のステークホルダーを集めることはできません。
この先、どういう人が集まってきて、どういう組織をつくっていって、どういう風に社会で存在意義を出していくのか、それを考えるのが未来視点です。
自分たちの存在意義を語ることが企業におけるフィロソフィーです。経営者や社員は、企業の存在意義を語れるでしょうか。
自分たちが何を社会に提供しているのか、何を社会に表現しているのか、語れるでしょうか。
★経営者の勘は当てにならない
企業の存在意義とは、お客様が喜んで消費や投資をしてくれる理由です。その理由が明確でないと、自分たちが売りたいものだけをつくってしまったり、お客様からそっぽを向かれる値付けをしてしまったりしがちです。
市場に合った価格でなければモノは売れませんし、理解もされません。市場が何を求めているか、お客様が何に対して興味を持ってくれるのか、そこに自分達の商品やサービスが当てはまっているのかをきちんと分析する必要があるのです。
多くの中小企業は、商品やサービスの価格を大体このくらいだろうと、経営者の勘で決めてしまいがちです。
勘に頼ると、成功することもあれば失敗することもあります。
勘は個人のスキルに依存しすぎる点でリスクが大きいのです。
経験とデータに基づいた科学的な分析が求められるのです。
【ブランド力とは】「なんとなく経営」はもうやめよう
時代の変化についていくには市場調査は必至
ブランド構築というと、ロゴやパッケージ、店舗のデザインを有名なデザイナーや建築家に依頼しようという発想になりがちです。
地方自治体に行くと、特にその傾向は顕著です。その人のデザインセンスに期待する部分もありますが、知名度のある人を起用したいという自己顕示欲や、何かあったときに名前が知られていれば安心という、保険料も込みで考えているからでしょう。
昔はそれでも良かったのです。巨匠のデザイナーに「これが当たるんじゃないか」と言われて、それが通っていた時代もありました。
今は、それが通用するほど甘くありません。
データを収集して、分析して、ネットやSNSではどういう言葉がトレンドになっていて、どういうものを消費者が求めているのか。
徹底的なリサーチをして、競合他社が何をやっているのか、自分たちがベンチマークすべき企業はどこで、その企業の売れ筋の根拠は何か、しっかりと市場をリサーチしないとダメなのです。
なんとなくやっている企業には、それなりのスタッフしか集まらない
今後、企業の経営戦略とブランド戦略は一体に考えていかなければなりません。商品やサービスはもちろんのこと、良い人材を集めるためには、人事評価制度や福利厚生などのインナーブランディングも、ブランド戦略の一環として考えなくてはいけません。
例えば、わが社は何のためにこの府k里甲制に取り組むのか、リクルーティングや人材育成は、どういうカタチなら我が社の企業理念に即しているのか、突き詰めて考える必要があります。単に世の中や社員が求めているからといって、それをそのまま提供したところで意味がないのです。
よく「女性が働きやすい会社です」と、人材募集でアピールする企業があります。
単に人集めのために謳っている企業と、社内のバックアップ体制が整い、女性役員の登用実績があり、女性が生き生き働ける社風が確立している企業では、内実はまったく違います。
優秀な人であればすぐに見抜いてしまいます。
例えばグーグルは、応募者を何回面接するか、産休から仕事に復帰するにはどれくらいの期間が理想的かということも、検証して考えて考えて考え抜いて、その数字を出しているわけです。
それが、インナーブランディングなのです。
なんとなく「他社がやっているから」というのでは、優秀な人材は集まらなくなっているのです。商品提案も人材育成も、なんとなくやっている企業には、なんとなく買ってくれるお客様と、なんとなく入ってしまったスタッフしか集まらない時代なのです。
【ブランド力とは】去年と同じ商品やサービスは通用しない
去年の「いいね」が、今年は「残念だね」に
時代の移り変わりが速いので、なんとなく今までの延長線上でビジネスを行っていたのでは、マーケットから置いてきぼりを食らってしまいます。
企業は、機能の延長線上で同じことをしていたら衰退する時代です。去年と同じ商品は今年同じようには通用しないし、サービスも進化し続けなければなりません。
去年3つ星をもらったサービスも、進化しなければ他社のサービスに埋没してしまって、「残念なサービス」などと評価されてしまうのです。
AIが進化することによって、これまで人間がやっていた仕事のいくつかは、コンピュータやロボットがやってくれるようになります。
昔のそろばんが電卓に、通信や文書作成がコンピュータに置き換えられてしまったようなことが、これからあらゆる現場で起こってくるわけです。
これを「第四の波」という人もいます。
現在、20年前のようにオフィスで清書を仕事にしている人や和文タイプを打っている人はいません。タイピストも電話交換手もいなくなりました。
これからも、当たり前だと思われていた仕事がなくなっていく可能性があります。昨日の延長線上で将来の戦略を立てることはできないのです。
肝心なのはデータを読み解くスキル
大手と呼ばれる企業やある程度の規模のグローバル企業で、市場調査をしていないところはありません。
自分たちのどこがお客様に支持されているのか、競合他社は何を訴求していて、自分たちには何が不足しているのか、そうしたデータを活用して、自分たちは今後何を提供していくべきか、日夜考えています。
そうやって出てきた市場のニーズに、自分たちの企業理念や想いを照らし合わせながら商品やサービスを提供して企業のイメージを上げていく、つまりブランドづくりに専念しているのです。
そこでは、リサーチ会社から出てきたデータを読み解くスキルが、何よりも重要になってきます。
分析次第では、今までとはベンチマークする相手が変わってくることもあるからです。
例えばあるワインメーカーは、今までワイン売り場で勝負してきたのですが、データの分析をした結果、テーブルワインとしてビールと同じ価格で勝負すべきであると方向をシフトして、世界中で低価格ワインのシェアを獲得することに成功しました。
自分たちが勝負する市場がどこにあるのか、今後の可能性はどこに潜んでいるのかということを、データを読み解いて考えなければいけないのです。
同時に、マーケットの分析や提案が正しい方向を向いているのか、常に検証していくことも大事です。



【ブランド力とは】危機感を持ちチャレンジする企業だけが生き残る
ブランディングとは将来のために種を蒔くということ
グローバルで勝ち残っていくために、今までの発想をすっかり変えなければならない。そういう危機感を持つ企業だけが成長するのだと思います。
現状維持を良しとせず、攻めよう、挑戦しようという体質があるかどうかです。
現在、「これだけのネームバリューがあり、売上も安定しているので、リスクを冒したくない」という保守的な体質の企業は、ブランドへの投資などまず考えないでしょう。
極端な話ですが、自分の代で事業を終わろうという工場やメーカーの経営者は、設備投資はしないですよね。
でも次の世代に残そうと考えているなら、今何かやらなければいけないと、危機感を持って取り組むでしょう。
将来の飛躍の種を蒔くという作業がブランディングなのです。
次の世代や、今入ってきた新入社員のために何かを残さなければいけない、そのために投資するのがブランド戦略です。
専門家の発想に投資する
経営戦略は、経営者の発想だけでは価値のあるものは生み出せません。
例えば、30年前の野球と今の野球は全然違います。ですから、30年前に野球をやっていた人がそのときのままの知識や感覚でいたら、素人には教えられますが、一流の選手は育てられないのと同じです。
経営者自身が現場の最前線にいながらも業界や自社の状況を熟知していないのなら、そこに精通した専門家を入れるべきですし、他社がどんなことをやっているのか、リサーチを徹底することも必要です。
ところが、将来のためのブランド戦略に投資する企業は非常に少ない。経営状況が悪いわけではないのです。
お金があるのにやらないのは、そこに価値を見出せない企業が多いということでしょう。
逆にお金がないけれど、危機感を持っている企業の方が生き残りのために必死になって専門家を読んだり、本を読んで勉強したりしています。
長い目で見れば、両者の立場は逆転していくでしょう。
創業何百年という老舗の大企業ですら、創業時の理念と現在の自分たちの役割をすり合わせてブランドを再構築する際には、外から専門家を呼んでディスカッションをしています。
その時代のその社会に即した「ビジョン」「ミッション」「バリュー」を構築するには、他者とのディスカッションが必須であることを認識しているからです。
伝統という名前の上にあぐらをかいた、独りよがりの社風になることを戒めているのです。
同時に、外部の専門家を交えて議論することで、社員の心をブランド構築に向けて束ねていく効果も見込んでいるのです。
【ブランド力とは】チャレンジする企業に面白い人間が集まる
自分の頭で考える仕事が多い企業か
チャレンジしない企業、面白いことをやっていない企業は、基本的に社員が自分で考えて取り組む仕事が少ない企業です。
自分の頭で考える仕事が少ないと、何がおきるかというと、「今のままでいい、むしろ考えない仕事がしたい」という人しか集まって来ないのです。
このような環境では、チャレンジしたい人は会社を去ることを選択します。
「もっと面白いことがやりたいけれど、会社がその方向を向いていないなら外に行くしかない」という人は出て行って、「まぁ何を言っても変わらないし、そこそこブランドもあるから」という人が残るのです。
近い将来、ルーティンワークと呼ばれる仕事はAIに取って代わられてしまいます。人がする仕事は、クリエイティブで、発想したりものごとを提案していったりすることしか残らないといわれています。
現在、面白いことをしようとする人間を育てる投資をしていない企業は、将来どんな人材が残るでしょうか
現状維持で良いと思っている企業、チャレンジしない企業、社員に挑戦させない企業は、まず人材面から細いっていきます。
マネジメント的に見ると、同質の人材を大量に抱え込んで、他人の言うことを聞いたり、どんな無理難題でも我慢できるような辛抱強い社員をたくさん持ってしまったりすると、これからは企業にとってものすごく負担になってくるでしょう。
【ブランド力とは】ブランド構築とは、その企業でなければできない仕事を追求していくこと
ファミリービジネスは、文化があるから残っている
ブランド構築とは、極論すればその企業でなければできない仕事を追求していくことに尽きます。トップは企業の方向性や理念から、その企業でなければ実現できないものを社会に対して表現し、その文化を背負っていく誇りを大事にすべきです。
例えばエルメスだったら、エルメスの文化を背負っています。フランスの職人を使って自分たちにしか表現できないものを追求しているのです。
日本はファミリービジネスが世界一多いといわれています。
200年以上続いている企業も世界で一番多いようです。
上場企業の半分くらいはファミリービジネスなのです。
ファミリービジネスは端的に言えば、文化があるから残っているようなものです。
社会における存在理由がその企業の文化であると、認められているのです。
現在でも社会から必要とされているファミリービジネスとは、「自分たちでなければできない、自分たちだからこそ表現できる」というものが明確でないと、生き残っていけない時代なのだと思います。
目に見えないものこそ、価値のある文化である
今は3Dプリンターがありますから、エルメスと同じ布で同じ形で同じものをつくることは可能です。
スキャンして材料を分析してつくれば同じものはできるのですが、でもそれはエルメスではないのです。
そう考えると、エルメスは目に見えるものを売っているわけではないことに気がつきます。
目に見えるものやカタチになっているものと、目に見えないもののどちらが高いのかと考えると、目に見えないもののほうが価格の大きなウェイトを占めているのです。フェラーリが、車の原価だけで2000万円するかといえば、そうではないですね。
目に見えないブランド戦略や車にかけるフェラーリの想いといったことに人は満足をするし、乗ることにステータスや喜びを感じて2000万円払うのです。
シャネルというブランドにお金を払う人は、ココ・シャネルという1883年生まれの女性の人生観にお金を払っているともいえるのです。
彼女のブランドが世界の女性に受け入れられたというのは、自分自身でも語っている通り、単なるファッションではなく「常に素敵でありたい」というスタイルをつくったからといえます。
女性が社会で戦っていく上で、彼女のデザインする機能的なカットは女性の生き方を変えていきました。ココ・シャネルは、自分が描くビジョンを事業を通して、世の中に広めて確実に時代を変えていったのです。
ナイキのスニーカーを履くのは、全員とは言いませんが、創業者フィルナイトの「Just Do It」に共感を覚えたからでしょう。
彼の「最初の一歩を踏み出すことができれば、人生を前に進めることができる」という強烈な想いが世のアスリートに響いたのです。
今、成長途上にある企業は、小さいなりに自分たちにしかできないことに取り組んで、自分たちの文化をつくっていけばいいのです。
家族には家族のルールがあり、組織には組織のルールがあります。なぜルールがあるのかといえば、そこで大事にしているものがあるからです。
例えば、夕食を全員で食べるのが大事な家族もあれば、週末に家をピカピカに磨くことを大事にしている家族もあります。それぞれが家族の文化なのです。
企業においても、大切にする何かがあるのとないのとでは、ずいぶん違ってくると思います。
うちの会社は何を大切にしているのか。
経営者は社員に向けてしっかりしたメッセージを発する必要があるのです。
企業は、家族と違って他人の集まりですから、方向性を示す図面が必要ですし、ゴールを設定してそこに向かうための考え方も併せていかないとダメなのです。だから、皆をまとめるコンセプトが企業には絶対必要なのです。
【ブランド力とは】企業におけるすべての活動は、ブランドづくりにつながる
インナーブランディングとアウターブランディング
企業ブランディングは、インナーブランディングとアウターブランディングの二つから成り立っています。
この二つは別々にあるのではなく、互いに相補的であり、一方だけが存在するということはありません。いわば車の両輪のような関係です。
インナーブランディングとは、社員に対する取組みであり、主に日々の業務や研修において、ブランドの浸透を図ります。
企業理念に即した「実践行動」を促進し、ベクトルを合わせて、質を向上させていくものです。
アウターブランディングは、社外の人間に対する取組みであり、主に広報・広告活動でブランドの浸透を図ります。
お客様の「経験価値」を豊かにして、自社へのブランドロイヤルティーを生み出すのが目的です。
社員の「行動」がお客様の「経験」をつくる
経営者は企業理念をつくります。
すべてはそこを起点にしています。企業の存在価値を明確にして、ビジョン達成に向けて社員一人ひとりに必要とされる働き方を分かりやすく伝えます。
インナーブランディングでは、社員一人ひとりに企業カルチャーの浸透を図り、企業ブランドの社内理解と実践を促します。
アウターブランディングでは、競合他社との差別化を図ります。企業カルチャーに沿ったサービス提供やビジュアル展開が必須となります。
各種の施策で社外へのブランド浸透を実現します。
インナーブランディングは、採用から社員教育、研修や人事評価制度、事業計画などであり、アウターブランディングは、広告宣伝、広報、営業活動にわたります。
要するに、企業におけるすべての活動は、ブランドづくりといってもいいでしょう。
この二つのブランディングが実現するのは、事業の成長と企業価値の向上です。
社員の「行動」がお客様の「経験」をつくり、それがお客様の心の中に「ブランド」を生み出すからに他なりません。
インナーブランディングにおいて重要なのは、企業が大事にしているカルチャーを社員に深く浸透させることです。
カルチャーを明確化し、浸透させ、定着させるという順番になります。
カルチャーの浸透は、認知的理解、情緒的共感、実践行動の3つから成り立ちます。
つまり、「想いを理解し、共感しているから、行動に移せる」わけです。
いわば、社員の行動の質をカルチャーに沿って高めるQC活動といってよいでしょう。そしてカルチャーが浸透しているかどうか、定期的に調査を行います。
【ブランド力とは】企業のイメージを想起させるのは社員、ごまかせないのが人
企業のエッセンスは社員の行動に表れる
お客様を含めた世の中一般の人々は、何からその企業をイメージするのでしょうか。つまり外部の人は、どこを見てその企業を評価しているかです。
企業ブランドをイメージさせるのは、経営者でもなければメディアでもありません。
その企業に勤めている社員たちなのです。
私がインナーブランディングの大切さを重ねて説くのは、企業理念を社内に浸透させることが、社外に情報発信する以上にブランドづくりにとって影響を与えるからです。
逆にこういうこともいえるかもしれません。すべての企業のエッセンスは、社員の行動に表れるのだと。こんな経験はありませんか。
魅力的な広告を出していて、For the Customerを謳っている企業なのに、社員の態度が悪くて幻滅した。社員の行動によって、すべては台無しになります。
ごまかせないのが人なのです。逆のパターンもあります。たとえ店内が古めかしくても、社員のホスピタリティーがすごく高かったら、あえて味を出している戦略なのかと好意的に解釈するでしょう。
事業において、人がカバーする範囲は実に大きくて、他者に与える印象も強いのです。ですから社員が、自分の会社の事業の目的を理解して自発的に動けることが非常に大切になります。
マニュアルはオールマイティーではない
社員一人ひとりが事業の目的や理念、価値観を理解して動くということ、マニュアル通りに働かせることは本質的に違います。
例えば東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは、自分たちが「夢を売っている」ことに関して、スタッフの間で共通の理解が浸透しています。
お客様を大切にする、お客様に楽しんでもらうというカルチャーが徹底しているのです。
スタッフ以外の外部の取引先にも、その理念に対する理解と同時に、それを実現するためのクオリティーが求められています。
当然マニュアルも存在しているのですが、それは理念に紐づいたものと理解されていますし、マニュアルの範囲外の出来事に対しては、ディズニースタッフとしてどうあるべきなのか、自分たちの価値観に照らし合わせて行動ができるようにカルチャーがしっかり浸透しています。
ブランドへのロイヤルティーが社員の中にあれば、マニュアルの範囲を超えて、正しい行動がとれるということです。
逆にいくらマニュアルやコンプライアンスが整備されていたとしても、何のためにそれを守るのか社員の中に落とし込まれていなければ、ブランドを戒める行為はなくならないでしょう。
【ブランド力とは】企業カルチャーが定着していれば社員はどう動くか分かる
マニュアルだけでは、残念な行動は防げない
マニュアルはとても大事ですが、すべてのことに対してマニュアルだけで対応することは不可能です。
ある外食企業で、中国工場の社員がナゲットの肉を蹴っている動画が流出しました。その企業では、世界最高峰といえるほどの詳細なマニュアルを完備しており、どこのお店に行っても味が変わらない、同じクオリティーの商品提供を可能にしました。
今回そのような不祥事が起きたということは、結局、社員の中で何のために自分たちはこの商品を提供しているのかという目的を共有する気持ちがすっぽり抜け落ちていたからでしょう。
コンビニでも、アイスクリームケースの中にアルバイトがふざけて入ってしまうのは、結局、その企業の価値観を浸透させる教育を怠っていたから起こったことでしょう。
当たり前ですが、企業のマニュアルには「アイスクリームケースの中に入ってはいけません」とは書かれていません。常識で考えればわかることです。
そんなことを言い出したら、考え得るすべてのことをマニュアルに書かなければいけなくなりますし、それは不可能なことです。
マニュアルには書かれていないけれども、理念や企業カルチャーがしっかり浸透していれば、そこで社員がどう動くか分かるということが大事なのです。
SNSがすっかり個人の情報発信ツールとして定着していますから、これまでのように不祥事を隠蔽することも、ことが起こってから揉み消すということも難しくなりました。
何をやってもバレてしまう時代なのです。
社員やアルバイトをマニュアルで縛るよりも、自分たちが大事にしている価値観を浸透させた方がリスク管理の上からも効果的なのです。
【ブランド力とは】価値観が共有できていれば、お互いに不幸は生まれない
「こんなはずではなかった」を防ぐために
マニュアルでしか社員の行動を縛れない企業では、マニュアルの隙をついて次々に起こる問題に対して、後追いで対応せざるを得なく、それは時間とコストを浪費し、かつブランド力の低下を招きます。
企業理念の浸透に力を入れて、インナーブランディングに取り組んでいる企業では、その企業の価値観に共感して入社する人が多いので、社員は同じベクトルを向いています。詳細なマニュアルを導入するコストをかけないで済むのです。
プロ野球選手になった人が、結果を出せなくて1年目で戦力外通告されても文句は言いません。普通の企業で1年目の新卒社員が「お前、戦力外だな」と言われたら、それはひどい話ですが、プロ野球は実力だけの世界であることを選手も球団もお互いに理解しているからです。
プロとして通用すると判断されれば契約が継続される、という方針を理解した上で入ってくるので、ダメなら戦力外通告されることは織り込み済みです。
価値観を共有できる人を採用する
採用におけるマッチングも似たようなことがいえます。
企業はあらかじめ、自分たちのブランドや理念、想いについて、入社希望者に明確に示す必要があります。そこで価値観を共有できる人であれば、入社してから「こんなはずではなかった」というミスマッチはおきません。
企業の理念に共感できない人、価値観を共有できない人が入社してしまうのは、お互いにとって不幸を招きます。
極端に生産性が低かったり、コンプライアンスで問題を起こしたりするのは、その社員の能力に問題があるというよりも、価値観を共有できない企業に入ってしまったから起こることが多いのです。
採用に関する情報を発信する際には、等身大で自社のカラーをきちんと打ち出すことを意識しなければなりません。現実とかけ離れた情報を出しても、お互いに公開するだけです。社風やカラーが合いそうなので働きたい、という理由の人を多く集めるべきです。
金銭的な条件のみで企業を選ぶ人は、他にもっと良い条件のところがあったら、そちらに移っていくでしょう。とりあえず誰でもいいから採用して、残りたい人だけ残ればいいというやり方では、結局誰も残らず育成のコストが無駄になるだけです。
応募する人はさまざまな入口から企業を発見するのですが、採取的にはホームページを確認します。ですので、ホームページはしっかりと経営者の意図を反映したつくりにしなければなりません。
会社や仕事に対する経営トップの想いを動画やテキストでしっかり伝えましょう。
独りよがりな内容や表現にならないように、専門のコンサルタントに依頼して第三者目線でまとめてもらうことも、一つの手段といえます。


