NFTが創出した音楽を「所有」する新たな体験価値の提供
NFT:音楽業界はサブスクのその先へ
他の業界同様、Covid-19は非常に大きな影響と変化を音楽市場にもたらしました。
感染拡大を防ぐため、多くの国で大規模な音楽フェスを含むイベントやライブ公演を行うことが困難ななか、サブスクリプションサービスでの音楽需要が拡大しています。
ますます拡大するサブスクリプション=音楽に「接続」するサービスが音楽市場を牽引していますが、エジソンが1877年に発明した蓄音機からはじまった、録音した原版をレコートやCDなどに固定、購入したファンが音楽を所有するフィジカル音楽ビジネスの売上は42億ドルと減少しています。
国別の音楽市場規模を見ると、アメリカの1位に続き、日本、イギリス、ドイツ、フランス、そして韓国です。
アジア全体では音楽の収益は9.5％増加。
その中でも、韓国が前年比44.8％増と市場を急速に拡大しています。
K-POPアーティストBTSは彼らにとって初めてすべて英語で録音された曲DynamiteでアメリカのビルボードメインシングルチャートHOT100で1位を獲得。
グラミー賞にノミネートされるなどの快挙をはたし、世界の音楽業界に大きなインパクトを与えています。
K-POP以外でも、近年、レゲトンやラテンヒップホップなど、急速に台頭してきたラテン音楽の若手アーティストも売上前年比15.9％増と継続的に成長。音楽のグローバル戦略の結果が数字に表れています。
NFTは、デジタルでありながら数量を限定して販売できる偽造付加な鑑定書・所有証明書付きのデータというユニークな特性により、この音楽を所有するビジネスモデルを活性化し、音楽市場全体を底上げする大きな可能性をもっています。
音楽業界におけるNFT事情
３LAU（ジャスティン・ブラウ）
エレクトロニック・ダンス・ミュージック界のスター、３LAUとして知られるBlauは、アルバムUltravioletの3周年を記念して、33個のNFTをさまざまな価格で販売しました。商品にはカスタムソング、彼のWebサイトでの未発表の音楽へのアクセス、彼の音楽をベースにしたカスタムアート、そしてUltravioletの11のオリジナル曲の新バージョンが含まれていました。
Blauが実施した販売方法、オークション販売は音楽の購入体験を一新させました。
オークションの残り時間が3分での入札は、オークション延長となります。
このリセットが40回以上も繰り返されたため、オークションは数時間も延長され、Blauと彼の家族全員が驚く結果となりました。
歓声を上げていたのに、みんな口をつづんでしまったんです。
Blauははじめての売却を振り返って、信じられないと短い笑い声をあげました。
最終的には1170万ドルの売上となり、いくつかの新記録を樹立しました。音楽NFT史上最大の売上であるだけでなく、今回のオークションで最も高値なトークンに支払われた360万ドルは、プライマリーで販売されたNFTの中で最も高額なもののひとつとなりました。
これまでにNFTでそれ以上の価格で落札されたのは、アーティストBeepleの660万ドルのデジタルアート作品を含めアート分野の5作品に限られます。
また、Blauはファンドとともにブロックチェーン音楽投資会社を設立。
楽曲の所有権をNFTとして販売、ファンがロイヤルティを受け取れるようにする音楽マーケットプレイスRoyalを2021年8月26日に発表しました。
私はいつも、アーティストの人気は会社や配給会社ではなく、ファンやリスナーに完全に依存しているといっています。
もしファンが音楽を気に入ってくれて、それを共有してくれて、ライブに足を運んでくれれば、アーティストの人気を高める責任は全てファンにあるのです。
だからこそ、早くから誰かを信じていた参加者たちがアップサイドを得るべきではないでしょうか？とBlauは語っています。
スヌープ・ドッグ
世界的な人気を集める西海岸出身のラッパー。限定ＮＦＴ KＯＲＥＫＵＳＨＯＮＮＷＯ
Crypto.comで2021年4月2日（金）午後4時から24時間限定で販売しました。合計８つの作品が数量限定で販売され、ひとつの作品はオークションにかけられ、もうひそつの作品はSnoop Dogge Coinsは1時間限定のオープンエディション。Death Rowと題した作品は10万8000ドルで落札されました。
「私は、アナログからデジタルへとゲームが変化していくのを長年見て来ました。
そして、テクノロジーによってファンがアーティストと繋がることができるようになると、いつもうれしくなります。
NFTは素晴らしい技術革新であり、Crypto.com・NFTで最初のドロップを行うことは名誉なことです」とスヌープ・ドッグは述べています。
また、NFTの可能性について、「NFTの爆発的ヒットは早かったまだまだ知らない人や、理解できない人が沢山います。
でも、これからは理解できるようになるでしょう。
NFTは、アーティストのビジネスやファンとのつながり方を変える大きな瞬間であり、大きなテクノロジーです。
私はそれを楽しみにしています」とスヌープ・ドッグはヴァニティフェアのインタビューで語りました。
ダラス交響楽団
メトロポリタンオペラ管弦楽団の演奏かたちは、2020年3月12日から、パンデミックのために世界的に有名なオペラ・カンパニーが閉鎖され、仕事がない状態に陥りました。ダラス交響楽団は、メトロポリタンオペラ管弦楽団のメンバーとのパンデミック時代のコンサートを記念して、3層のNFTをブロックチェーン上で販売。販売の収益は、メトロポリタンオペラ管弦楽団の音楽家のために役立てられます。
DSOのNFTは、オークション販売と個数限定＆定額販売があり、オークション販売はフィジカルサービスとの組み合わせとなっています。
① マーラーの交響曲第1番の最終楽章の音声、演奏者と演奏風景の限定写真。25個を100ドルで販売
② 第1楽章の映像、DSO音楽監督ファビオルイジのインタビュー、2022年初頭にニューヨークで開催される室内楽のコラボレーションによる再結成コンサートチケット。15個を1000ドルで販売
③ コンサート本編のビデオ、リハーサル映像を含む舞台裏の映像、インタビュー、特集など。さらに、アーティストとのディナー、アメリカの他都市からの往復航空券、2泊分のホテルを含む、再結成コンサートでのNFTバイヤーVIP体験を提供。オークション開始価格：5万ドル
Perfume
パフォーマンスで披露された振付の中から、Perfumeのメンバー3人の象徴的なポーズを３Dデータ化し、Imaginary Museum Time Warpとして作品化しました。
コンセンサスアルゴリズムのPoSを使い環境負荷を小さくしたPolygonを採用し、ライゾマティクス独自のNFTアートのマーケットプレイスNFT Experimentでリリース。
オークション販売の結果、2万MATIC、日本円に換算すると約325万円で落札されました。
GERIEND
日本発のマーケットプライスながら、多言語・多決済対応サービスにより日本、韓国、アメリカ、フィリピン、インド、マレーシア、タイほか全世界からのアクセスを獲得しました。
発売した商品素材はすべて、解散したアーティストの既発商品でありながらも、NFTを鍵として複数素材を組み合わせた商品を再構成。
オークション販売、先行予約販売といったユニークな販売方法も実施し、ファンに新な体験価値を提供することに成功しました。
LOUDNESS
5日後の8月10日よりライブ写真のほか、豪華賞品を取り揃えオークションおよび数量限定で音楽専門のNFTマーケットプレイスThe NFT Recordsで発売。通常の音楽販売に先行したNFT販売は日本初の試みとなり、オークション商品も31万円で落札されました。
「何だかわからないけど本能的におもしろそうって感じたし、ロックの基本精神スクラップ＆ビルドに通じるというか、我々みたいに40年やってるバンドが、先陣を切ってこういった新しいスタイルで、音源を発売してみるっていうのもおもしろいと思ってね」とLOUDNESSはNFTに関してコメント。
The NFT Recordsではクレジット決済もできるし、世界中のファンも購入できるということで、やってみたらファンのみんなもおもしろがって購入してくれて、曲に対する反応がすぐに聞けて良かったよ。
もちろんヴァイナルや、CDなどフィジカル商品も大事にしていきたいけど、完成してから世に発売されるまで2ヶ月もかかるからね。
音楽のNFT展開が多くの可能性をもつことを実証してLOUDNESS。
約60もの媒体に取り上げられるなど、音楽＆NFT市場に新たな足跡を残し、2021年10月1日には第2段のNFT展開も実施しました。
SEAMO
日本人ラッパー初、公式NFTを音楽専門のNFTマーケットプレイスThe NFT Recordsで2021年9月3日発売。第57回紅白歌合戦出場ラッパーSEAMOが、自身の大ヒット曲「ルパン・ザ・ファイヤー」を、ハモネプで話題沸騰の男女混成5人組アカペラグループ、ハイスクール・バンバンとコラボレーション。ルパン・ザ・ファイヤーwithハイスクール・バンバンとして新録した音源をNFT化しました。
NFTに関してSEAMOは「NFTは、僕らCD世代のアナログ感覚と、デジタルの両方を併せもつ可能性だらけのすばらしいコンテンツだと思っていますNFTという新しい体験価値を通じて、音楽を所有する喜びをファンの皆さんと一緒に楽しみ、つながりたいです」とコメントしました。
