















NFTが現実にしたデジタルファッションの新な表現と展望
NFTはファッションの新しいフロンティア
ファッション業界は、石油産業に次いで2番目に環境負荷の大きい業界であり、全CO2排出量の10%、および全廃水量の20%を占めるといわれています。
このためデジタル上で完結するファッションは、フィジカルな商品の生産を必要としないため、環境にやさしく、またより多様な表現が可能であるとして、ヨーロッパのブランドやスタートアップを中心に注目を集めています。
そしてこのデジタルファッションに、NFTの仕組みを導入することで、希少性の証明が可能になり、また他のユーザーとの取引が容易になるといったメリットがあるといわれています。
このNFT×ファッションの分野を、大手情報サービスを提供するBloombergは、Fashion Next Frontierであると表現しました。
NFT×ファッションのユースケースを、アート、メタバース、着せ替え、リアルとの融合の4つのカテゴリに分けて説明をします。

アート×ファッションのNFT
2021年初頭におけるNFTアート市場の急拡大に伴い、一部のファッションブランドは、画像や動画でブランドの世界観を表現したNFTを発行・販売しました。
最も有名なものは、グッチが発行した動画のNFTでしょう。この動画ではまず大きな青い扉が開き、建物の中からドレスを来た女性が現れます。
そして白馬が女性のもとに駆け寄ってくるというシーンが合計4回再生されます。
グッチは本動画において、新しさへの普遍的な願望、そして冬が過ぎ去った後、開花して新たな生命が誕生することへのあこがれ、されに扉が開き、闇が光と希望の空気に変わる様を表現したと説明しています。
本NFTは、大手オークションハウスであるChristisのwebサイト上で販売され、2万5000ドルで落札されました。グッチはこの売上をユニセフのコロナ対策チームに寄付したと発表しています。
また、ゲームの中で、NFTアートを配布する事例も出てきています。ルイヴィトンは創業者の生誕200年を記念して、2021年8月4日にモバイルゲームLOUIS THE GAMEをリリースしました。
同ゲームは、各地に散らばっているキャンドルを集めながら旅をするというコンセプトで、旅の途中でゴールデンチケットというアイテムを獲得すると、同社が発行するNFTアートの抽選配布に応募できます。
NFTの種類は全部で30種類あり、このうち10種類は著名なNFTアーティスト、Beepleによって製作されたものになるとしています。
メタバース×ファッションのNFT
まずユーザーはNFTのマーケットプレイスから、同サービスに対応しているNFTを購入します。
その後、Decentralandにログインし、バックパックのページから購入したNFTを選択すると、アバターにNFTのファッションを着用させられます。
なお、Decentralandの委員会から承認を受けると、同サービスで利用可能な服の製作・販売を、外部の会社でも可能になります。
日本ではNauGhtEdというチームが、同サービスに対応したファッションNFTの製作を行っています。
さらに特定のメタバースサービスに対応したファッションブランドのNFTを発行する動きも出てきています。
バーバリーは、ブロックチェーンゲームBlankos Block Party内で利用可能な、サメの形をしたアバターNFTを発表しました。
このNFTは750枚限定で発行され、ひとつあたり299,99ドルと高額であったにもかかわらず、販売開始後30秒で完売しました。

着せ替え×ファッションのNFT
次にNFT発行会社のサービスにログインした後、自身が映る画像をアップロードします。数日以内にデジタルファッションが合成された写真が、ユーザーのもとに送られます。ユーザーはその写真を、ソーシャルメディアで共有します。
このモデルの火付け役となったのが、オランダでデジタルファッションの製作・販売を行うThe Fabricantという会社です。
同社はFlowやCryptoKittiesを開発・運営するDapper Labsと提携して、2019年にデジタル上で着用可能などれすIridescence DressをNFTとして販売した結果、当時としては高額の9500ドルで落札されました。
またトリビュートブランドというデジタルファッションブランドも、ルクソというブロックチェーン上で、人気eスポーツチームNinjas in PyjamasのデジタルファッションのTシャツをNFTとして販売しました。
ユーザーはトリビュートブランドのサービス内で、自身の写真をアップロードすることで、このTシャツを実際に着ているかのように写真上で見せられます。
第一弾のNFTプロジェクトとして、スペースクラフト・エージェンシー所属のファッションモデル、広瀬未花氏がデザインした服のイラストをもとに、同社が3Dのデジタルファッションを制作いたします。
そしてこのデジタルファッションをNFTとしてブロックチェーン上に発行した上で、国内外の大手NFTマーケットプレイスで販売していく予定です。
同NFTの所有者は、2022年ローンチ予定のジョイファのサービスを用いることで、写真上でデジタルファッションを着用できます。

リアル×ファッションのNFT
NFTアーティストFewoとのコラボプロジェクトでは、NFTアート販売後6週間経つと、NFT所有者はRTFKTの特設サイトから、リアルスニーカーを申請できます。
ひとつのNFTにつき1回しか申請は行えませんが、申請後でも引き続き同NFTを所持し続けたり、市場に流通させたりすることができます。
また、この他にもドルチェ&ガッパーナは、同ブランド初のNFTコレクションCoolezione Genesiを発表しました。9枚発行されるNFTのうち5枚が、リアルとデジタルの両方に対応したものになるとしています。
日本では、コスチュームやウェディングドレスのコレクションを展開しているTomo Koizumiが、大手暗号資産取引所のコインチェックとジョイファとの連携を発表しました。
本連携では、メタバース×ファッションや着せ替え×ファッションの取り組みに加えて、リアルなドレスの所有権をNFTとして発行し、市場に流通させる予定です。
このようなNFTと使った取り組みは、日本のファッションデザイナーとしては初めての試みになります。
ファッション×NFTの課題して最もよく挙げられるのが環境問題です。環境意識の高まりにより、デジタル上でのファッション表現に注目が集まった一方で、NFTの発行や流通には多くの電力を必要とするという矛盾があります。
イーサリアムのアップグレードや、FlowやPolkadotのような電力の消費を抑えた振興ブロックチェーンの普及に期待しています。
また、他の分野と同様、ファッションのNFTを購入するのはブロックチェーンに深い知識のある層が中心で、一般のファッション好きな方たちが購入しやすい仕組みにはなっていません。
より多くの人にファッションのNFTを楽しんでもらうには、ユーザーインターフェースの簡易化が求められています。