















元祖NFTを生み出したDappaer Labsが解説するNFT特化型インフラ
NFTビジネスを支える技術インフラ
今日、NFTは狭義のNFTをはみ出し、NFTを活用するサービスやコンテンツを含む一大産業になりつつあります。
たとえば、NFTを売り買いできる場から、NFTを直接活用できるデジタルワールド、NFTの管理・活用にユーザーが使うツールをはじめとする周辺アプリまで、ユーザーから見えるサービスだけとっても、デジタルデータの希少性を担保し金融資産化を可能にするNFTの活用方法は目を追って急速に増えつつあります。
もっとも、イーサリアムの存在はクリプトの歴史の大半を占めており、多くの熱狂的なトークン保有者・開発者からなる充実したエコシステムが、NFT元年である2017年から4年近くたったいまでも、多くのNFTに技術インフラとしてイーサリアムが活用されている理由のひとつなのです。
実際、イーサリアムはNFT関連以外の領域においても最も多きのサービスの技術インフラとなっており、現時点ではクリプト領域においてスタンダードとして確立しつつあります。
日々多様化するNFTの事例に対応する場合も、イーサリアム上でNFTサービスをつくっておけば、既に存在する多くのサービスを最小限のストレスで連携できます。
たとえば、OpenSeaなどのNFTマーケットプレイスはイーサリアム上のNFTアセットを取り扱うことは容易ですし、後述する直近のトレンドにもなっているゲーム・金融の融合といった場面でもP2PでNFTを貸す・借りるといった分散型金融サービスを展開するうえで開発者のストレスを抑えられます。
一方で、実働していたNFTのインフラがイーサリアムのみであったNFT元年とは異なり、イーサリアム以外に多くのNFT特化型インフラが生まれたことも事実です。
これらの多くは、当初イーサリアム上にサービスをつくろうとした開発者が、イーサリアムの技術的な制約が原因で理想のサービスをつくれなかったため、こうしたギャップを埋めるために生まれました。
先述したCryptoKittiesも例外ではなく、アプリとして多くのユーザーの興味を引き付けたものの、結果としてインフラ技術がイーサリアムでは需要に耐え切れず、本来のポテンシャルを発揮できなかったとも言えます。
実際、NFTを使いやすく・開発しやすくした技術基盤を展開することで、直近のNFTブームに乗じてNFTをはじめるきっかけを短期間で多くのマスユーザーに影響したという観点において、Flowをはじめるとする新世代のインフラは事業者・開発者の陰の立役者といえるでしょう。
NFT特化インフラの初代プレイヤーとして最も歴史が長いのはWAXです。これまでNFTコンテンツのロングテールを形成する40以上のプロジェクトに信頼されており、直近ではMLBのNFTを発行するThe Toppes Companyや、日本でもおなじみのストリートファイターNFTのためのインフラを提供しています。
ただし、現状NFT領域においてイーサリアムに最も近いL1インフラプレーヤーはWAXでなく、NBA Top Shotの基盤にもなっているFlowです。FlowはNBA Top ShotもつくっているDapper Labs社によりつくられたNFT特化インフラですが、ローンチ1年未満で、NFT特化インフラのリーディングプレーヤーになりました。
本NFTブームの火付け役といっても過言ではなくNBA Top Shotを展開するまでどういう意思決定があったか。
そもそも、なぜFlowは開発されたのか、これからの展開戦略はどういったものか。
Dapper LabsのCBOミカエル・ナイームによるFlowの事例を通じて、NFT特化型インフラがポジションを固めるまでの共通意識・ポイントを見ていければと思います。

L2インフラについて
既存L1インフラを活用するL2インフラは、既存のL1インフラに対応しているため、一定程度既存サービスとの連携が可能であり、NFTの機能の充実化などを効率的に実施することができます。
NFT領域において注目される特化型L2インフラは、大きく分けて過去に注目されていたChild Chains、現在活用されているSide Chains、活用されはじめているRollpsの3種類があります。

Child Chainsとは?
イーサリアムをベースとして、取引速度の向上に特化したインフラです。
処理スピードが速く、手数料が固定されていることに加え、ユーザー数にも柔軟に対応できます。さらに、イーサリアムを活用することから、セキュリティも極めて高いとされています。
難点としては、多様なプログラムに対応できる柔軟性をもっておらず、アセットの移動や好感といった単純な取引にしか対応できない点が挙げられます。
なお、Child Chainsからアセットを引き出す際に、L1インフラとL2インフラとの間の照合期間が発生するため、資産を引き出すのに1週間ほどかかる場合もあります。
また、定期的にL1インフラとChild Chainsの状態を照合する必要があるので、ユーザーにとって照合コストが高い点があります。
このようにユーザービリティ面の課題から、足許では別ソリューションに移行するプロジェクトが多数存在します。

Side Chainsとは?
Child Chainsと似ていますが、イーサリアムをベースとしつつも、「上」につながっているわけではなく、別インフラとして「横」に存在するインフラです。
イーサリアムと相互連携が可能な自前トークンを活用し、L1インフラに頼らない自前のガバナンス体制とセキュリティ体制を構築しています。
また、イーサリアム以外のL1インフラにも対応させることができる点や、L1インフラ・L2インフラ間の照合をSide Chainsアップデート時にのみ限定できる点が特徴です。
難点としては、イーサリアムと比べ相対的に低いセキュリティをもつインフラにユーザー資金を完全に供託する必要がある点が挙げられます。

Rollupsとは?
多くの取引をひとつの取引に丸め、L2インフラで処理をしながら、取引サマリーとユーザー資産をL1インフラで管理する手法です。
取り引き処理の速さ・安さ、ユーザー資産のオープンさのバランスを目指しており、現時点では金融特化型の事例への適用が主流となっています。
NFT領域において現時点で実働しているRollupsソリューションはまだ少ないものの、今後の成長が注目されています。

L2インフラ:Polygon/Axie Infinityの事例
Polygonは現状唯一実働しているイーサリアムソリューションであり、イーサリアムとの相性の良さからNFTを活用するゲーム事業者だけでなく、スケーリングニーズを抱えるDeFi大手事業者による活用も進んでいます。
当初はイーサリアム上のChild Chainを開発予定でしたが、いまはChild ChainとSide Chainのハイブリッドを提供しており、Side Chainへの入り口機能としてChild Chainを、実際の取引にSide Chainを使っています。
Rollupの機能を待てない事業者にとって、既に実働しており、イーサリアム対応していて、かつ早くて安い取引を可能にするL2インフラへのニーズは高く、PolygonはSide Chainを提供することでそのニーズに応えています。
さらに、Flowの戦略同様、自社トークンを活用したゲーム・NFT支援ファンドを発表しており、ロングテールのブロックチェーンゲーム事業者にも資金面の支援を提供する予定となっています。
加えて、同規模のDeFiファンドも立ち上げており、たとえばNFTを担保にしたローンやNFTの価値予測市場といった包括的にNFTとかかわりうる領域へとさらに範囲を広げています。
Polygonは複合的なアプローチでNFT領域において存在感を高めてきましたが、対極にあるのがRoninと呼ばれるSide Chainsです。RoninはAxie InfinityをつくったSky Mavis社の自社インフラですが、Roninを導入することでAxie Infinityを爆発的にヒットさせ、ゲームと金融の融合というトレンドをつくりました。
Axie Infinity自体は2018年から存在するゲームプロジェクトで、ポケモンのように保有するモンスターAxieを戦わせるゲームです。
ブロックチェーンゲームならではの特徴として、ゲームプレイで得られるさまざまなゲーム内アセットを通じて、直接的な収益をプレーヤーが得られる点があります。
Ronin導入前より、フィリピンなどの一部の国では、Axie Infinityによる収益を副収入源とする一部ユーザーが見られました。
金銭的な参入障壁が低くなったことにより、ゲーム内活動はさらに活発になり、既存ユーザーが自発的に新規ユーザーを呼び込んでくるようなポジティブサイクルも生じました。
圧倒的なゲーム需要に応じる形で、ゲームを始めるのに必要な数のAxieを貸し出す組織や、ゲーム内のプロプレーヤー集団を抱える組織など、ゲーム活動の周辺領域に専念するコミュニティメンバーや事業者も立ち上げられ、直接的にゲームで稼ぐという新しいゲームの在り方に対する関心が高まりました。
こうして、Axie Infinityは、新しいゲームの在り方を代表するプレイヤーとして、クリプト業界の範疇を越えて世界の注目を集めるようになったのです。
また、2021年6月~8月の期間を見ると、ゲームによるプレイヤー報酬がイーサリアムのL1インフラ自体による収益を越えるまでに至りました。
イーサリアムの技術的な制約から、NFT特化型インフラはうまれました。L1・L2インフラはUXにおいてそれぞれ差はあるものの、基本的にはイーサリアムよりNFTのマススケーリングを可能にする点において優位性があります。今後、高級デジタルアセット以外にNFTの事例が多様化する中で、イーサリアム上からNFT特化型インフラに移るNFTアセットは増えるでしょう。
NFT特化型インフラの存在により、いくつかのキラーアプリが誕生しました。これらを通じて、NFT特化型インフラはさまざまなユーザーニーズに応えています。
たとえば、Flowは強固なIPに紐づく熱狂的なマスコミュニティを抱えるNBA Top Shotを支えており、Roninは発展途上国におけるマスコミュニティの経済基盤にもなっているAxie Infinityを支えています。
NFT領域に限らずDeFi領域をはじめとする広範な領域に展開し、大手事業者のサービス支援を通じてより広くユーザニーズに応えているインフラとしては、Polygonが存在します。
最終的には、それぞれのインフラ上にキラーアプリをどれだけ増やせるか、またGamefiのような複数パーティカルをまたぐトレンドを補足できるインフラとなりうるかがポイントになると考えます。
クリプトでは日々イノベーションが起きていますが、資金の流れという定量的な結果を見ると、改めてNFTの勢いにはすさまじさを感じます。
さらにNFTをもつことにより、同NFTコミュニティへ所属することもできる。
こうした所属意識や自慢する権利は人間の普遍的な本能ではないでしょうか。
たとえば、これまではロレックスを身に着けてゴルフ会員権を持つことに価値があると思う人が多かったかもしれませんが、これからは気に入ったプロフィール画像をもつことで入れる限定コミュニティのDiscordで活動することに価値を見出す人が多くなるかもしれません。
将来はVR空間でデジタル版のロレックスを身につけて、ゴルフ会員権を持つことがステータス、という風にトレンドが一周してもおかしくありません。
画像や動画形式のNFTの売買はかつてないほど盛り上げりを見せていますが、活用ポテンシャルを踏まえると正直まだ序の口かと思います。
個人的には、分散型組織を活用した新たな働き方やDeFiと組み合わせが進み、VRなどの技術とも連携が実現することで、より直感的な形で、幅広い層にNFTも理解されると思っています。
とはいえ、少年期に「お金にならないから」という理由でゲームを両親に制限された立場からすると、誰もがゲームをすることで自律的に金銭的価値をつくれることは革命的な進歩だと思います。
NFTが立ち上がったタイミングでクリプト業界に入った身として、今後もNFTおよびクリプト業界全般の発展に貢献できるよう精進していきたいと思います。