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ビジネス会計:財務諸表とは

財務諸表とは

財務諸表の利用

企業に関する各種の情報はあふれています。そのなかで一般的に決算書と呼ばれる情報が財務諸表です。

財務諸表は、会計という一定の視点から効率的に利益を稼ぐことを目的とした企業の状況を表す情報群から構成されています。

ある会社の利益2兆円というように、マスコミなどを通じて企業の儲けである利益が取り上げられることが多いですが、この利益こそ、会計がそのプロセスを通じて集計した数値です。

利益は主に経営成績を表す損益計算書で公表されますが、企業の財政状態を表す賃借対照表の利益剰余金にも含まれています。

株主が企業に対して出資している内容の変動に関する株主資本等変動計算書や、資金の状況を表示するキャッシュフロー計算書も公表されます。

財務諸表は当該企業の各部署の日々の取引を記録、集計することによって、最終的に経理部門が作成します。

財務諸表の作成は会計の重要な任務ですが、作成することそれ自体が会計の役割について知ろうとする各種のステークホルダー(利害関係者)に提供することも会計の重要な機能の1つです。

このことをディスクロージャー(企業内容の開示)といいます。

会計情報と会計情報の利用者であるステークホルダーとの関係について、経営者は、財務諸表などの会計情報をよりどころにして経営上の種々の判断を行います。

投資者にとっては、投資を行うか否かの判断や、既に行っている投資の増減、さらには維持などの判断に会計情報が不可欠です。

資金の融資を行う債権者は、融資をするかどうかの判断に関係情報を使います。また、従業員は会計情報をもとに自社の経営内部を分析して、報酬の妥当性を判断します。

取引先は、会計情報をもとに債権の回収可能性を評価した上で取引契約を結びます。

国・地方自治体も企業の会計情報に基づいて、税金の徴収や料金規制を行います。

ステークホルダーは多様です

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ステークホルダーの意思決定と関心事

ステークホルダー意思決定関心事
株式投資者・株主株の売買・値上がり益、・配当金
社債投資者社債の売買・元本の償還、・利息の支払い
金融機関融資の可否・元本の返済、・利息の支払い
得意先(顧客)商品、製品、サービスの購入・価格、・品質・安全性、・アフターサービス
仕入れ先(企業への供給者)原材料、商品、サービス供給・価格、・掛け売りの可否、・許容金額
従業員労働力の提供・賃金、・雇用の確保、・福利厚生
地域住民企業との共存・環境、・経済的恩恵、・社会貢献
国や地方自治体徴税・課税所得、・税金支払能力(担税力)
経営者経営管理・株主からの評価、・経営業績

さまざまなステークホルダーが多様な関心をもって財務諸表を利用します。それとともに、金融機関や国・地方自治体といった組織を除いて、人々はいくつかの企業について複数の種類のステークホルダーである可能性があります。

1人の人が投資者であったり、従業員であったり、顧客であったりします。また、企業が存在する地域の住民であったりもします。我々の生活は企業を1つの重要な核として営まれています。

会計の基本的プロセスと財務諸表分析

会計の基本的プロセスは、

本体企業活動
ルール会計基準
写体財務諸表
解釈財務諸表分析
判断企業状況

まず、財務諸表の作成のプロセスがあります。

簿記と呼ばれる仕組みを用いて、企業活動(本体)を財務諸表(写体)に写し取ります。そして、作成された財務諸表からステークホルダーが企業の状況を解釈して各種の意思決定や判断に利用するのが財務諸表分析です。

財務諸表分析は、企業の状況を写し取った財務諸表を読んで解釈し、本体としての企業の状況を判断する手順や方法です。

そのため、とくに上場企業のようにステークホルダーが多岐にわたり、企業の状況が多くのステークホルダーに影響を与える企業の財務諸表は公開・開示されるのです。

これらの関係は地図に似ています。地図の場合、地表の状態が本体にあたり、地図が写体にあたります。

地図は実際には凸凹した地表の状態を地形図作成のルールに従って紙面などに写し取ったものです。

地図にも作成者がいますが、地図を利用するのは多くの一般の人々です。

地図ならば、表の作成と利用も同じ考え方なのです。

地図を利用する場合に地形図の記号などのルールを知っていないと、単なる絵模様に過ぎないのと同様に、財務諸表分析に関しては財務諸表作成のルール、すなわち会計基準を学ぶことが必要になります。

※財務諸表の作成と財務諸表分析の双方に会計基準が入っているのはそのためです。

財務諸表の種類

財務諸表は、前述のとおり企業活動に伴う企業の財務状況を明らかにするもので、いくつかの種類があります。

なかでもとくに重要なのが、企業の財政状態を示す貸借対照表と経営成績を示す損益計算書の2つの財務諸表です。

また、企業活動に伴う資金の出入りを示すキャッシュフロー計算書も重要な財務諸表です。

財務諸表を株主や債権者などのステークホルダーに対して公開することについては、事業を行う全ての会社に適用される会社法や譲渡制限のない株式を発行している会社に適用される金融商品取引法によって義務付けられています。このような会社の情報の公開のことをディスクロージャー(企業内容の開示)といいます。

つまり、企業の会計に関する制度には、会社法と金融商品取引法の2つの制度があり、これらの制度にもとづいて財務諸表を公開しています。

というのは、会社法と金融商品取引法では対象となるステークホルダーに若干の差異があるからです。会社法は、情報開示を通して、主に株主・債権者の保護を目的としています。これに対して金融商品取引法では、主に一般投資者の保護を目的にしています。

なお、会社法では財務諸表を計算書類といい、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書および個別注記表が含まれます。また、金融商品取引法では、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書およびキャッシュフロー計算書に付属明細表を加えて財務諸表と呼びます。

会社法上の計算書類の体系金融商品取引法上の財務諸表の体系
貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュフロー計算書、付属明細表

本記事では、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、財務諸表分析の方法について説明をします。

ところで、個々の会社が作成する財務諸表の体系ですが、今日では、多くの企業がグループ経営を前提として経営戦略を展開していますので、事業活動の成否を評価するには企業グループを単一の組織とみなした連結財務諸表が必要になります。